治療院業界だけでなく、時間外労働や残業費など、労働基準法に基づいた労働環境改善を目指している経営者さんが多くなっているように感じています。もともと、サービス業や技術職、一部歩合制の業種は労働時間があって無いような状況になっています。
労働環境に対して近年、会社と従業員側のトラブルが多くなっていることも大きな原因ではないでしょうか?以前書いた、雇用契約問題で労基に行った際にも窓口の方がおっしゃっていましたが、「ネットの普及とともに労基トラブルが急増しているそうです。
厚生労働省のサイトを確認してみると、労務トラブルの相談件数もH,24年の1,141,006件をピークに緩やかに減少しているようです。ちなみにH,14年の相談件数は625,572件になっています。従業員側がネットで自分で調べて、労基に相談というケースが非常に多くなっているようです。
ちなみに、研修もしっかりと労働時間に含まれます。いくら面接時に「休日や営業時間終了後に残業して、手技を覚えてもらいます」と事前に確認を取っていても厳密にいうとこれもアウトになります。
参考に、サービス残業・残業代請求.COMさんの研修は労働時間に含まれないのでしょうか?
Q:研修は労働時間に含まれないのでしょうか?A:研修も労働時間に含まれます、よって会社側は、研修に参加した時間分の労働賃金を従業員に支払う義務があります。
「黙示的な指示」かどうかについては、
・参加する社員の職務内容に関連しているかどうか
・社内の規律や業務効率などの維持向上に資するものであるかどうか
・労働安全衛生法などの法令に基づいて開催されているものであるかどうか
・参加しないことによる不利益な取り扱いを受けるかどうか
問題はあくまでも自主的か強制かという部分になるようです。
とはいえ、時間外労働が当たり前の業界もあります。TV業界や美容師業界、飲食業界、そして治療院業界も負けじとそうでしょう。近年、治療院業界以外でも労務トラブルが多発していて度々メディアで取り上げられています。治療院業界は規模が小さすぎて取り上げられることはないでしょうが。
これを最小限に抑えるためには(時間外労働を推奨しているわけではありません)自主的にトレーニングを行う従業員を集めるしかありません。たいした覚悟もなく「柔道整復師になりたい」「整体師になりたい」という人間を採用して、ガンガン時間外労働をさせているとそのうち、労基に相談に行く従業員が出てきます。
もし時間外労働が多くて、残業代も支払はないならば、しっかりと求人広告や面接時に応募者の覚悟を見極めなければいけません。私たちは治療家集団だということで、日々業務時間外でトレーニングを行いトラブルが無い院も存在します。院のコンセプトをしっかりと打ち出すことが非常に重要ですが、反面、応募のハードルを上げすぎると、求人に対して応募が来ないという事態にもなりますので、治療院業界も今後は労働時間厳守がスタンダードになっていくと予測しています。(長い時間が必要だとは思いますが)
治療院業界も、労働時間に対する対応は急務だと思います。「うちは大丈夫」と思ったあなた、その油断が命取りになります。まあ、大半の会社が一度痛い目を見てから労務環境改善に動き出すわけですが。
前ふりが長くなりましたが、ここからが本題。治療院業界も「労働時間を改善しよう」という経営者さんが増えてきているように感じます。そんな経営者さんに対してここからは書いていきます。厳しいやり方も中には出てくると思いますが、労働環境を改善するためには、はじめの1歩を勇気を持って踏み出すことと最小限にリスクを抑えて行う必要があります。
労働時間について考える
時間外労働についてですが解決策は2通りあります。
- 時間外労働を無くす。
- 時間外労働には残業代を支払う。
ここでは、従業員が自主的に時間外にトレーニング等をしたという概念は除いておきます。本当に自主的なのかどうかという、議論は現場でしか分からないと思うので。
2.時間外労働には残業代を支払う。
時間外労働に対して、トラブルを無くすためには上記1,2の方法になります。2.時間外労働には残業代を支払う。を実現できれば本当は一番良い解決策なのではないかと思いますが、現実的には難しいでしょう。初期採用トレーニングや残業してのトレーニングに全て残業代を支払うことは容易なことではないでしょう。
よく治療院では、技術力の向上=患者満足度となり、手技トレーニングが行われます。本当に経営者が技術力の向上=患者満足度(来院数アップ)と思っているならば、残業代支払えるのでは?と思うのですがいかがでしょうか?遠慮のない言い方をしますが、経費がかからないから、とりあえず手技トレーニングしてませんか?
本当に技術力の向上=患者満足度(来院数アップ)と思っているならば、残業代を支払ってドンドン手技トレーニングを行えば、手技力向上すればするほど、ドンドン来患数も向上し院も従業員も患者も、皆にとって良い状況になるはずです。
本気で経営者が時間外労働に対して「何とかしなければ」と思っているならば、まず第一歩は何となくやっていることを止めることだ。この考えを持ったないといつまでも、時間外労働トラブルは解決の方向には向かないでしょう。
残業代バンク:とっても大事なサブロク協定(36協定)
本来は法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて(延長して)労働させたり、休日に(1週1回または4週を通じて4回を下回って)労働させること自体が労働基準法違反となるのですが、サブロク協定(36協定)を締結して労働基準監督署に届出することによって労働基準法違反にならなくなるのです。
確かに、雇用契約書で残業時間○○時間も込みで基本給と残業代を分けておいたり、36協定を結んでおくという方法もあるでしょうが、根本的な解決策にはなっていません。従業員の業務精度を上げたい、時間外労働を無くしたいならば、院側が時間管理を徹底する事が第一歩ではないでしょうか?
時間外労働対策の第一歩は、成果の出ていない時間を明確にすること。
「 残業代を支払ってでも従業員の時間を拘束するのか」ということを、経営者が本気で考える。「いや~、○○に対しては残業代は支払えない」と思うならばその時間は無くしてもホトンド院の業績は変わらないでしょう。
本当に従業員のためにと思うならば、逆にセミナー参加費という形で、自由参加にして料金を徴収してもいいのではないでしょうか?極論ですが、いきなり全てを止めろとはいいません。繰り返しになりますが、「 残業代を支払ってでも従業員の時間を拘束するのか」ということを考えよう。従業員の将来の為にというキレイな言葉に甘えて、無駄な時間を拘束していないだろうか?
本当に時間外労働を無くしたいならば、どうやって勉強会に欠席する従業員が雰囲気的に、不参加出来る環境を院で作ることが出来るのか?を考えよう。勉強会に参加しない従業員が不利益を受ける、もしくは院の和を乱すという空気が出来ているならば、それは本当に大きな問題だ。
時間外労働を無くすための、第一歩
具体的に成果の出ていない時間を明確にする作業が必要になってくるわけですが、そもそも営業時間が法定労働時間を超えている院は、値上げや施術時間の短縮等の問題になってきますので、もう少し頑張りましょうとしか言えません。稀に、休憩時間なしで10時間以上営業していて、患者が来ない時間が休憩時間のような院もありますが、長期的に継続不可能なので急務で解決する必要があります。
本題は、しっかりと売上高を取れていて営業業時間外の労働時間がある院になります。こういった院の時間外労働を削減していくためのステップを書いていきます。
S1.営業時間以外の時間外労働を全て書き出す。
手技トレーニング、会議、コミュニケーショントレーニング等、営業時間以外の拘束時間を全て算出しよう。自院で営業時間以外にどれだけ時間を拘束しているのかを知ることがまずは第一歩になります。
S2.時間外労働の人件費を算出する。
営業時間外の労働時間を全て算出できたならば、次にやることは算出した労働時間を人件費に換算してみよう。ここで大切なことは換算した人件費に対して全て支払おうということではないことです。(本来支払わなければいけないのですが)
時間外労働に必要になっている人件費を経営者が把握しておくことが重要です。
S3.時間外労働、人件費が算出できたならば、それらが効果が出ているのかを検証する。
項目ごとの時間外労働を算出できたならば、やめることが出来そうなことを明確にしよう。新人スタッフの研修や新しいメニューの研修はやめることが出来ないでしょう。これらは、その先に必ずと言っていいほど、売り上げが待っているからだ。
売り上げに直結していないことからやめていく、これが時間外労働を止めるコツです。
また、項目ごとの時間外労働を売り上げに直結しているのか因果関係を明確にすることは難しくなりますが、経営者ならば本当は分かっているはずです。本当に分からないならば、一定期間やめて業績の変化を見てみよう。残念ながら本当にやめてみないと、因果関係は分かりません。
まとめ
時間外労働問題を解決するためには、経営者の勇気が一番の問題になってきます。
- 時間外労働が何時間あるのか?
- 人件費に換算すると、金額を把握しておく。
- 売り上げに直結しないであろうものからやめて、業績の変化を見てみる。
- どうしても、やめることが出来ないことは残業代を支払う。
上記のような流れが出来れば、大きく時間外労働を削減できるのではないでしょうか?なかなか勇気が必要ですし、面倒なことも確かです。でも、本当に時間外労働に対して、何とかしたいと思うのならば動きださなければ何も変化は起きません。
従業員の為にということで、ドンドントレーニングをすることも1つのやり方でしょう。もう一つのやり方として、経営者として従業員に時間を与える経営方法が実現できるということも、経営者としてカッコイイと思うのですが、経営者さんいかがでしょうか?
とにかく時間を拘束するならば、常に費用対効果を意識する事が大切です。
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